2017年04月16日
Natureにアナグマの保全関連の学術情報が掲載されました

Natureにアナグマの保全関連の学術情報が掲載されました

Nature誌Correspondence(意見)欄に、九州のアナグマ駆除および食肉利用に関する記事を投稿し、4月13日に掲載されました。Natureは、自然科学分野では最上位にあげられる学術誌であり、被引用回数(インパクトファクター、IF)が38という突出した高レベルです。1月に九州のアナグマ駆除の実情を知ってから、この情報をどのように考えていくべきかについて、Oxford大のアナグマ研究チームの仲間と話し合ってきましたが、情報を研究室ブログに書くだけでなく、まずは広く公表することが重要な一つのステップだと思い、今回投稿するに至りました。

Yayoi Kaneko, Christina D. Buesching, Chris Newman. 2017. Unjustified killing of badgers in Kyushu. Nature 544: 161.

http://www.nature.com/nature/journal/v544/n7649/pdf/544161a.pdf

Natureは、生物分野の研究をしていると誰でも一度は掲載してみたいと思う、憧れの雑誌です。このような優れた学術誌に学術成果や自分の視点が掲載されたことは、大変栄誉なことです。一方で、これは保全活動にとっては、スタート地点を国際的な視野において意義が高いものだと応援してもらっている、ということだと思いますので、これからニホンアナグマの保全へ向けてどのように動くか、がむしろ重要だと思っています。それにしても今回、私が長年取り組んできたアナグマに関する、最近の保全関連の問題を情報提供できたことで、今後も自分の研究と保全関連の活動について、全力を注いで取り組んでいこうと、情熱があらためて呼びさまされたように思いました。

実は、この記事が掲載される前の週に、東京駐在のNature誌Newsコーナー担当の記者と話す機会がありました。今回、このニホンアナグマの大量駆除の記事が掲載された意図としては、日本の人々の、野生動物を含めた動物全体に対する(保全の根拠ともなる)正確な学術情報の薄さと、動物福祉に関する関心の低さを、改善していってもらいたい、と思っているそうです。国際的にみると、経済的には先進国として認識されている日本ですが、動物福祉や野生動物保全は大きく立ち遅れている部分であり、最近の動物関連のマスコミ報道を見渡しても首をかしげざるを得ない情報が多く、特に動物福祉面ではさらに間違った方向へ進んでいる、という印象だそうです。