アナグマ類の基礎生態研究 (Badger Project)

 アナグマが属するイタチ科の動物は、進化の過程の中でその生息地への適応範囲が最も広く、陸上では土中から樹上まで、水中(海水、淡水)にも生息し、またアジア地域において種分化が進みました。当研究室では、アナグマをはじめとするイタチ科動物の基礎生態研究を行っています。現在、現生の食肉目が生き残ったキーファクターの一つである、匂いによる群れ内、群れ間のコミュニケーションを調べるため、アナグマ類の臭腺分泌物の化学成分についてのプロジェクト、またアナグマ属 (Meles) の遺伝的多様性に関する共同研究(北大増田研)を行っています。

Publications

金子弥生. ニホンアナグマ. 1996. 日本動物大百科1巻, 142-143. 平凡社, 156pp.

Kaneko,Y. 2009. Meles anakuma. The Wild Mammals of Japan. (Ohdachi,S.D., Ishibashi,Y., Iwasa, M.A. & Saitoh, T. eds) Shoukadho Book Sellers. 544pp. 258-260.

Tashima, S., Kaneko, Y., Anezaki, T., Baba, M., Yachimori, S. and Masuda, R. 2010., Genetic diversity among the Japanese badger (Meles anakuma) populations, revealed by microsatellite analysis. Mammal Study 35: 221-226, Japan.

Tashima, S., Kaneko, Y., Anezaki, T., Baba, M., Yachimori, S., Abramov, A.V., Saveljev, A.P., and Masuda, R. 2011. Phylogeographic sympatry and isolation of the Eurasian badgers (Meles, Mustelidae, Carnivora): implication for an alternative analysis using maternally as well as paternally inherited genes. Zoological Science 28(4): 293-303.

Tashima, S., Kaneko, Y., Anezaki, T., Baba, M., Yachimori, S., Abramov, A.V., Saveljev, A.P., and Masuda, R. 2011. Identification and molecular variations of CAN-SINEs from the ZFY gene final intron of the Eurasian badgers (genus Meles). Mammal Study 36: 41-48.

終了プロジェクト
イギリス南部のヨーロッパアナグマ (Meles meles) 高密度個体群の資源利用と繁殖成功に関する研究

オックスフォード大学演習林Wytham(ワイタム)の、30年以上モニタリングが続けられている高密度個体群を対象として、David Macdonald教授の食肉目の資源利用が社会形成に与える影響に関する仮説Resource Dispersion Hypothesisを、巣穴温度の観点から検証するフィールド実験を行いました。その結果、4度以上の急激な変化が繁殖成功に影響し、グループの空間配置や移入個体の増加にもつながることについて考察を行いました。

Publication

Kaneko, Y., Newman, C., Buesching C. and Macdonald, D.W. 2010. Variations in badger (Meles meles) sett temperature and humidity, from a high-density population: Differential cub survival between main and subsidiary setts. International Journal of Ecology. doi:10.1155/2010/859586

  • ニホンアナグマから採取されたsubcaudal grandからの臭腺分泌物.大同分析リサーチの小菅さんらが化学成分分析を行っている。ニホンアナグマから採取されたsubcaudal grandからの臭腺分泌物.大同分析リサーチの小菅さんらが化学成分分析を行っている。
  • Wytham woodsのアナグマの巣穴Wytham woodsのアナグマの巣穴
  • ブタバナアナグマの食性分析。フンサンプルを水洗し仕分けした後に、主食となっていることが多いミミズの体毛の有無を確認する。ブタバナアナグマの食性分析。フンサンプルを水洗し仕分けした後に、主食となっていることが多いミミズの体毛の有無を確認する。