東京都市部と近郊に生息する中型食肉目の生息地保全
(Urban Carnivore Project)
プロジェクト1. 東京都心部の大面積緑地に生息するホンドタヌキの行動圏と環境選択 (Raccoon dogs in isolated green areas in central Tokyo)
東京の中心部に生息するタヌキの採食生態、社会構造、生息密度を調査し、大面積の都市緑地の都市生態系の維持における役割について考察を行っています。里山(日の出町)のタヌキと都心部のタヌキを対象として①都市のタヌキの体サイズや行動圏サイズの差異、②社会構造の特徴、③敷地外利用の有無や敷地の利用割合、④タヌキの健康状態やストレス状態を調査し、タヌキ個体群にとっての都市公園や緑地の生態学的価値について考察を行います。
プロジェクト2.東京近郊の河川敷や大規模緑地に生息するイタチ科動物の生息状況と生態 (Habitat of weasel species in Urban river bank and green areas)
東京西部地域の河川敷や大規模緑地にニホンイタチやアナグマなどのイタチ科動物が生息することが分かってきています。DNA種判定や性判定技術、自動撮影装置を駆使してこれらの動物を記録し、分布状況や食性について調査しています。
終了プロジェクト
都市近郊域に生息する中型食肉目ニホンアナグマ (Meles anakuma) の環境選択と生息地要求に関する研究 (Habitat selection of the Japanese badger Meles anakuma population in a suburb in Tokyo)
ニホンアナグマはアナグマ属の中で日本にのみ生息する種であり、里山などの丘陵地の生態系の上位種としての役割が期待されますが、研究の取組みが非常に少ない状態でした。博士学位取得のための研究では、まず東京都日の出町の本種個体群の基礎生態(成長や生活環)を明らかにし、そしてアナグマの食性、行動圏、環境選択や餌食物の分布、栄養状態について調査しました。その結果、人工林では餌が林縁に集中分布するため、アナグマは人為的な餌資源(餌づけ)によりある程度適応しているものの、巣穴環境や移動能力に制約があるため、生息地の分断により基本社会単位の形成にまで影響を受けることを明らかにした。そして、これらの成果を応用してアナグマの生息適地推定モデル (Habitat Suitability Index model) を開発し、NPOの協力を得て出版しました。
Publications
Kaneko, Y., Maruyama, N., Kanzaki, N. 1996. Growth and seasonal changes in body weight and size of Japanese badger in Hinodecho, suburb of Tokyo. Journal of Wildlife Research 1(1): 42-46.
Kaneko, Y. 2001. Life cycle of the Japanese badger (Meles meles anakuma) in Hinode Town, Tokyo. Honyurui Kagaku (Mammalian Science) 41: 53-64 (in Japanese with English summary).
Kaneko, Y. 2002. Inner structure of the badger (Meles meles) home range in Hinode-Town. Japanese Journal of Ecology 52: 243-252. (in Japanese)
Kaneko, Y. and Maruyama, N. 2005. Body weight and size change of the Japanese badger (Meles meles anakuma) caused by local people’s feeding in suburb of Tokyo. Honyurui Kagaku (Mammalian Science) 45: 157-164 (in Japanese).
Kaneko, Y., Maruyama, N., Macdonald, D.W. 2006. Food habits and habitat selection of suburban badgers (Meles meles) in Japan. Journal of Zoology, London 270: 78-89.
金子弥生・日本生態系協会ハビタット評価グループ.2008. ニホンアナグマのH S Iモデル.ハビタット評価シリーズ6.(財) 日本生態系協会. 13pp.
金子弥生. 2008. 生活史と生態-ニホンアナグマ. 日本の哺乳類学2 中大型哺乳類・霊長類(分担、高槻成紀・山極寿一編)東京大学出版会.